リネンという言葉は、現在では綿や合繊のタオルやベッドシーツなどの総称として表現されることが多いのですが、当店で扱っている“リネン”はその本来の意味の亜麻織物、もしくは亜麻製品という意味で用いています。一般的に、紡績、織を経て織物の状態になったものをリネンと呼び、その前段階で原材料の状態のものをフラックス(亜麻)と呼ぶことが多いようです。
それでは、リネンの元になる亜麻とはどんな植物なのでしょう?
亜麻とは、麻の一種で、その種類は200種以上もあると言われています。その中でも Linum Usitatissimumという種類のものは良質な亜麻繊維がとれ、栽培にも適した種類の麻です。小さく細い針状の葉で、葉柄がほとんど無く、白か水色の5枚の花びらを持ち、茎の長さは60cmから120cm程度の長さになり、植物としては大変長く丈夫な繊維が得られます。亜麻はまた、種やオイルを得るためにも栽培されていますが、こういった目的のためには短い繊維で大きな種の採れる種類の亜麻が選ばれます。
リネン繊維の構造は中空で、竹のような構造になっています。そのため、繊維の中心部に水が吸い上げられ、リネンの表面はさらっとしたままなのです。
リネンはとても環境にやさしいのです。環境にかかる負荷がとても小さく、全ての繊維の中で最も環境にやさしい繊維の一つです。では、どんな風に環境にやさしいのでしょうか?
まず第一に、当然ながら亜麻は100%天然の作物からできていて、その作物は少ない肥料で生育させることができ、土地を疲弊させにくい作物であり、何世紀にも渡って栽培できるということが既に証明されているのです。
リネンはその全ての部分が利用可能で、無駄がまったくありませんし、リネン繊維は生物分解性であり、リサイクルも可能です。 様々な他の種類の繊維との競争にも関わらず、今日まで利用されているリネンは自然の恵みと豊かさで今もなお、市場で受け入れられています。科学と新しい技術はリネンの代用品を見つけようと努力してきましたが、まだ成功してはいないのです。
繊維以外の亜麻の利用に現在、亜麻油が非常に注目されていますが、食用にはもちろん、建築材料、例えばペンキ製品に利用されるなど、様々な溶剤や石油ベースの化学材料に置き換える研究が進められています。
長年に渡る利用により、亜麻の優れた品質は、今日私達の利用する多くの製品にとって重要な役割を果たしています。亜麻は環境にやさしく、人にやさしい繊維なのです。
植物由来の材料であるリネンは、燃料、繊維、そして建設材料としても非常に注目が高まっています。石油の埋蔵量の限界と環境問題におけるCO2削減のために植物由来原料を産業原料に応用する試みが増えていますが、この傾向における良い例に、原料技術の分野があります。合成繊維をこれらの植物由来繊維に置き換える研究が進んでいます。麻や大麻などの靭皮繊維は様々な分野、特に強度、軽さ、価格の点でグラスファイバーと競っています。加えて、これらの植物繊維は生産の維持が可能で、生物分解性があり、グラスファイバーに比べて遥かに自然を傷つけないのです。
こういった特徴のため、いくつかの自動車メーカーはそれまで使用していたグラスファイバーを植物繊維からできたものに置きかえる可能性を探っており、実際に車のドアパネル等への実用化が進められています。
リネンは1万年という長い歴史を持つ繊維で、特別な方法で織り上げられてきました。 その糸は世紀を超えて、文字に書かれた歴史より長い期間、人類に貢献してきました。リネンは現在にも生き延びていて、明日のように新鮮な存在です。純粋に自然の産物であり、それこそが、未来のファブリックでもあるのです。
今日、 様々な素材との組み合わせにより、ますます自然にやさしい素材となっています。それは地球環境という規模のお話であるだけでなく、私達の家庭の中でも。